「じゃあな。紅葉。また来るからそれまでいてくれよー」
 夕方、駅まで見送りについてきた紅葉に、元気に手を振りながら、緑は電車に乗って帰っていった。



「疲れたでしょう?」
 見送りから帰って、腰をおろした紅葉に蒼太が聞く。
「いーや。なかなか楽しかったよ。緑は面白いや」
 紅葉は、クスリと笑いながら答えた。
 なんの躊躇いもなく懐いてくれた緑。
 緑は子供特有の、だが近頃ではあまり見掛けることもなくなった素直で真っ直ぐな純真さに溢れていて、一緒にいると意味もなく楽しかった。
 まともに見たことはないが、昼間の太陽みたいというのは、緑みたいなのを言うんだろう……。
「楽しかったよ。誰かに誘われて昼間出かけるのなんて随分なかった……」
 昼間のことを思い出し、言いながら
「いい子だね、緑は。やっぱ蒼太の弟だ」
 紅葉は笑ったつもりだった――