わからなくて当然。まだ出会ってから三日もたっていないのだ。
『何を焦ってるんだ?』
 ふいに訪れたもやもやとした感情を振りほどこうと、紅葉から視線を外して蒼太はうつむいた。
 彼女はそのうち、また何処へ行ってしまうかもしれない人。
 もともとは顔も知らなかった他人なのだ。

 そう、ただの他人――

『嫌だ……』
 浮かんだ言葉を、否定したがっている自分に蒼太は気付く。
 あいまいだった感情は、今や、はっきりとした形を成していた。
『他人だなんて嫌だ……』

 何故そう思うのか?
 答えはとっくに出ていた。

 もっと一緒にいたい。
 もっと知りたい。
 もっと色んな表情を見たい。
 もっと声を聞いていたい。

 この気持ちが何なのか……
 人に聞けば。

『それは恋でしょう』

 きっと誰もがそう言うだろう。