それでも、今ここをでて、蒼太のもとへ戻ることは出来ない。

 ――行ってあげてください、紅葉さん。

 そんなことをすれば、あの時、背中を押して、自分をここに来させてくれた蒼太に見せる顔がない。
『待っててね』
 手のひらのメモを握り締める。
 祈るようなきもちで、夜空の星を見上げた。
『きっと、戻るから』
 応えるかのように、夜空で小さく瞬く光に
 わずかに心なぐさめられた。
 一度は握り締めたメモを、再びきれいに伸ばして机の引き出しにしまう。
 ベッドに戻り、仰向けに横たわり
 紅葉は目を閉じた。