律子の勤める病院に着いたのは、連絡を受けて五時間後だった。
 紅葉達の実家の隣町にあるその病院は、大きな総合病院で、救急も受け付けている。
 紅葉とアキラは、実家にも寄らず駅から病院までタクシーで直行した。
 受け付けで名前を名乗り、両親の所在を確かめ、二人がいる病棟へ向かう。
 ナースステーションを探していると、丁度小走りで廊下の向かうからやってくる律子と出会った。
「紅葉!!」
 目を大きく見開き、声を抑え気味に呼ぶ。
 深夜二時の病棟は静かで、声を抑えてもよく響く。
「律ちゃん。父さん達は?」
「大丈夫。お父さんは腕の骨折だけ。お母さんは胸を打って肋骨折れたんだけど肺にはいってなかったから……」
 一気に話し、少し息をついて続ける。
「頭も、出血もう止まって、今のとこ外傷だけで、大丈夫そう。しばらく入院にはなるけど」
 そこまで言って、律子はじっと、その切長の目で紅葉を見つめ、ぎゅっと抱き締めた。