しばらくドアの前で佇み、気持ちを落ち着かせ、車両へ向かう。
 アキラはすぐ見付かった。
 紅葉の分も席を確保し、入ってきた紅葉に手招きする。急いでたので自由席しかとれなかったのだが、わりと車両は空いていた。
「律子からメールきたぞ」
「なんて?」
 アキラが確保してくれた席に座りながら聞く。
「二人とも命に別状なさそうだって。親父さんは腕折ってる。お袋さんは頭から出血あって、まだ調べてるけど意識はあったから大丈夫だろうって」
 アキラの言葉に、ホッとして、紅葉は座席に深く寄りかかった。
「大丈夫か?」
「うん。ありがと」
 紅葉は短く頷くと、それきり黙りこんだ。
 アキラもそれ以上何も言わず、紅葉をそっとしておくことにした。