「…なんなら俺が行ってやろうか?」




ソファーに座ったままぶつぶつと考えていたら不意に聞こえた低い声。



カチリ、ジッポで煙草に火をつけ吸った颯人は、白い煙と共にそんな言葉を吐き出す。




総長机の上に置いた灰皿に灰を落とし、そのまま椅子に座った。




その漆黒の瞳は俺を試すようなものだが…




コキッと首を鳴らし、小さくあくびをかみ殺す姿はやっぱり寝起きらしくて。



…つーか颯人行く気ないだろ。

だってお前が俺にあいつの護衛を指名したんだからな。




「…いや、いーわ」



ソファーから立ち上がりバサリ、上着を羽織って幹部部屋のドアを開けた。





そのドアが閉まる直前





「…じゃぁまかせたぞ」



確かに颯人の声が聞こえた。




ガチャンとドアが閉まる音が、倉庫に小さく響く。



「しゃーねーなぁ」


さっさとあの口の悪いくせにやけに弱いあいつの所へ行ってやるか。





颯人から指名されてんじゃ仕方ねーよ。

…なんて。



雨は好きじゃねーけど、
まぁ俺の中であいつの存在は、このウザい雨の中迎えに行ってやるくらいにはあるって事なんだろーな。




癪だけどよ。




おしまい