「ばぁちゃんにね。お話聞かせて欲しいってきたのよねぇ、果菜。

お母さん。なんか話してくれたって果菜が言ってたのよ。何かはわかんないんだけどね。

私、購買行ってくるから。その間お願い。」

あぁ……あのお話。

そうか。

さっきの夢は…………届けてくれたのね。彼が。


ふっと頬が緩む。

「そう。わかったわ。そのために今日は来てくれたんだね。……よし、してあげよ!

あれはね。ばぁちゃんが、まだとっても若い頃のお話……」

そう。まだあの子が生きていた頃の…


不思議な不思議なお話。

けど、夢じゃない。本当にあった不思議なお話。


窓からふわりと風が入ってくる。

秋なのに、春の暖かい匂いがする。

近くに彼がいる気がする。


きっと、また、誰かに届けようとしてるのね。


そう……私に、蝶子に。


夢を届けてくれたように。