辺りは住宅も少なくなり、車はどんどん山道を進んでいっていた。


どうやらこの様子だと“水着”は冗談だったみたい。


あたしはホッと一安心をして、窓から見える今まで見たことのない景色を満喫していた。



二車線の細い道の両側は畑だったり田だったり、それを抜けたかと思うと木々がだんだんと生い茂ってきて周りを木々に囲まれる。



そんなことを何度か繰り返すうちに、車は海沿いの道に出てきた。



風とともに流れてくる潮の香りが車内に充満する。


水平線で区切られた広がる青い海とどこまでも続く青い空。


微かに聞こえる波の音に耳を澄ます。



“海”か……。


あたしと哲哉さんが初めて会ったのも、海沿いのベンチだった。


たった一週間前のことなのに、何だか随分前のことのように感じてしまう。



あたしは風になびく髪を手で押さえながら、運転している哲哉さんを盗み見た。



優しい人……。


その心は海のように広くて……



「ん? どうしたの?」



「え、何でもないよ!!」



「そっか、見られてる気がしたんだけどな〜」




真横にも目がついているんじゃないかって思うくらいあたしの視線に気付く哲哉さん。



見ていたことがばれたって何かあるわけでもないのに、あたしはどうして隠すんだろう?



恥ずかしいから?


何なんだろう、この気持ち……。