『ピンポーン』



すっかりたたみ忘れていた洗濯物をたたんでいると、突如チャイムの音が鳴った。



あたしは途中で手を止めて、玄関へと音を立てないように静かに向かった。



ドアの中央の上に付いている覗き穴。


少し背伸びをして、そこから外を確認する。




「哲哉さ……ん……」




たった半日――。


そんな短い時間離れていただけなのに、なぜかすごく久しぶりに会えたかのように嬉しさが込み上げてくる。



緩む顔に高鳴る鼓動。



少しだけ……ほんの少しだけ、哲哉さんを愛しく感じた。



夢の中で抱いた、記憶をなくす前のあたしの彼への想いに似ている気がする。



まさか……ね?



哲哉さんもあたしとは初対面って言っていたし。



あたしは少し震える手でチェーンロックを外し、鍵に手をかけた。



そして鍵がカチャっと音を立てて開くと、ドアノブがゆっくりと反転した。