部屋の片隅に置かせてもらった衣裳ケース。



あたしはその前まで歩いていって立ち止まり、その上に置いてあるバッグを手に取った。



クッションの上に座ってバッグの中から一枚の紙を取り出す。



哲哉さんが書いてくれた携帯の番号。



これがあれば何かあっても哲哉さんと繋がる。



そう思うと少しだけ気が楽になれた。



傍にいなくても、哲哉さんのその存在に救われてるよ。




「えーっと、080689XXXX……クスッ」




もうすっかり番号を暗記しているみたい。



だけどその紙は捨てずに大事に折り畳み、再びバッグの中にしまいこんだ。




「さぁーてと。今日も一日頑張ろ!」




窓を開けて部屋の中に入ってくる心地よい風を体に感じながら、あたしは気分を入れ替えて家の中の片付けを始めた。