帰り道――。


何だか複雑な心境を抱えたまま、車に揺られていた。




「連れてきてくれてありがと」


「記憶の手がかりになるものもあったし、楽しんでもらえてよかったよ」


「本当にビックリした」


「うん、俺も」




車は来た道をどんどんと戻っていく。


この道は記憶に残っていないけど、通ったことあるんだろうな。




「ルリ、頭は大丈夫なの?」


「うん、平気」




よくよく考えたら体調が悪く感じたのも、記憶が戻りそうだったからかもしれない。 


帰りの坂道でさえ歩かせてくれなかった哲哉さんのおかげかもしれないけど……。




「本当に大丈夫?」




何だか……。




「今日の哲哉さん、いつもと違う気がする」




いつも心配してくれるんだけど、今日はいつもよりその度合いが大きい気がする。


気のせいじゃないなら、何かに不安になっている感じを受ける。



車が赤信号で止まり、あたしへと顔を向ける哲哉さん。


難しい顔をして、言いにくそうに口を開いた。




「あーっ……実はね……」