「大丈夫? きつくない?」



「ハァ……ハァ……平気」


「うーん、やっぱり休もうか」




随分と歩いたところで、胸の激しい動悸と息切れを隠しきれず、哲哉さんが立ち止まった。


喋らなければバレナイと思って、無言で哲哉さんに着いていっていたんだけど。



「ごめんね、すぐに気付かなくて……」



繋いだ手を離すと、頭の上に乗せて髪をクシャっと撫でてくれる。


申し訳なさそうな顔に、あたしまで申し訳なくなる。




「何で……分かった……の?」




未だ途切れ途切れの言葉に、哲哉さんはその場に座り込んだ。


顔を上げてあたしを見つめると、今度は自分の頭をクシャクシャっとする。


小さく漏らすため息。




「何となく……そう、思っただけだよ」




歩いたといったって、たかが10分くらいの道程。


ただ、そのほとんどが坂道だったんだけど。



あたしってどれだけ運動不足なんだろう。


記憶がなくなる前にどんな生活をしていたのかは分からないけれど、絶対引きこもりだったんだ、なんて思う。


それにしても……。


何だか険しい顔つきの哲哉さんは、どうしてそんなにもあたしのこと気付くんだろう……。