現実は小説よりきなり






それにしても、古沢君がここまで怒るのは何故だろうか?


そんなに私達は親しく無いよね?


首を傾げて考える。

どういう事だろう...と。



「どうかしたか?」

古沢君の声にハッと我に返る。


「...あ、うん。古沢君がどうして私の事でこんなに怒ってるのかな?って。ほら、私達ってそんな親しい間柄じゃないし」

疑問を口にしてみる。

分からないことは聞いとかないとね?


「....はぁ」

何故か溜め息をついて項垂れた古沢君。


「プッ...ハハ、琉希也ってば嵐ちゃんに何とも思われてないし」

何故か吹き出した美樹はお腹を抱えて大笑いし始めた。


「...チッ、うっせぇ美樹」

古沢君は美樹を睨み付ける。


なんなのだろうか?この二人。


「だってさ...ひぃひぃ...面白すぎだし」

美樹、笑いすぎだよ。


「...こ、これからだろうが」

な?と私に振ってきた古沢君。

何が?意味も分からず首を傾ける。


私に振られても困りますよ。



「嵐ちゃん、良いわぁ。やっぱ大好き」

美樹は私をギュッと抱き締める。


「チッ...てめぇ、狡いんだよ。嵐こっちこい」

とか言いながら美樹の腕の中から私を救い出そうとする古沢君。


「無理無理、嵐ちゃんは私の。私達って友達だもんねぇ」

と美樹が私を見るから、


「うん、そうだね」

と答えた。


だって、美樹はとはLINEしたり電話したりしてるしね。

寮の部屋にだって遊びに来たりするし、やっぱり友達だってだよね。



「...っ、マジうぜぇ」

古沢君、どうしてそんなに機嫌悪いのかね?

って言うか、引っ張られてる腕、地味に痛いです。


「ふ、古沢君?あの...」

腕痛いですと言おうとしたら、


「琉希也だ」

と言われ、


「へっ?」

と間抜けな顔したら、


「これからは琉希也って呼べ。それ以外受け付けねぇ。呼べ...琉希也だ」

と押しきられた。


「あ...えっと、琉希也君?」

って呼べば良いんだろうか?


良く分からなくなってきたぞ。


「...君付けかよ?まぁ良い...今はそれで」

満足そうに口角を上げた古沢君改め、琉希也君は私の腕をクイッと引っ張って美樹の腕の中から救出した。



「アハハ...琉希也面白すぎだし」

美樹は私を取り返すでもなく琉希也君を指差して笑い転げる。


どうやら、笑の壺のスイッチを琉希也君が押してしまったらしい。


視聴覚室に響く少し甲高い美樹の笑い声。

私は小さく息をついた。