現実は小説よりきなり







「ま、あんまり悲観的になっても相手の思う壺だし。それってなんか嫌だから」

顎を左手でさわさわ擦りながら美樹を見た。


普通に過ごすことを望んでるけど、負け犬になるつもりは毛頭ないからね。



「うん、確かにそうだよね。ね、嵐ちゃん、私や琉希也と友達だって見せようよ。そしたら嫌がらせ止むかも知れないし。隠してても今状態じゃ平穏は望めないんだし。攻めに転じようよ」

美樹の提案にズキンと胸の奥が痛んだ。


普通が良くて、彼らとの関係を秘密にしてたけど、それを晒すことで本当に平穏を手に入れる事が出来るんだろうか?

私の普通は取り戻せない所まで来てしまったらしい。



「...そんなので止むのかな?」

それも疑問だ。


「うん。私達のグループはそれなりに恐れられてるから抑止力にはなると思うよ。それに大っぴらに助けることも出来るし。私、嵐ちゃんに嫌がらせしてる奴等を懲らしめたいし」

美樹は握り拳を作って切り説する。

しかも、その笑い方怖いからね。

美樹の黒い笑みに、背筋がぞわっとした。


「自分の事を他人に丸投げするつもりはないよ。私だって戦うし」

普通の日常が壊れてしまってる今、猫を被ってる必要もないしね。

私も攻めに転じる。


もう、痛いのはごめんだ。



「よし!それでこそ、嵐ちゃん。じゃ、琉希也呼ぼう」

うんうんと首を縦に振って嬉しそうに笑った美樹は、素早い行動でスマホを制服のポケットから取り出すとタップし始めた。


「へっ?」

もう古沢君を呼んじゃう感じ?


「んもう、嵐ちゃん。顔が間抜けだよ」

フフフ...面白いとか言いながら私を見て微笑みを浮かべたままスマホを耳に当てた美樹。


間抜けな顔って...そりゃあんた驚くでしょ。

一人突っ込みを心の中でする私。


「あ、もしもし、琉希也?うん、そうそう...今すぐ視聴覚室ね」

美樹は満面の笑みで手短に話すと通話を終えた。


早いな、おい!



「.....」

古沢君は来るんだろうか?

彼まで巻き込まなくても良いように思うのは私だけなのかな。


「琉希也、すぐ来るって」

美樹はスマホを元の場所に戻すとピースして見せる。


「あ...うん、そうなんだ」

「うん、大急ぎで来るらしい。琉希也って嵐ちゃんの隠れファンだもんね」

アハハ...単純と爆笑する意味が分かんない。

美樹って、時々謎だ。