古沢君はうちのヤンキーの中心人物なのは間違いない。


彼の回りには常に派手な女子が集まり我先にとアピールする。

そして、派手な頭の男子達もそのおこぼれにあやかろうと集まるのだ。



ま、私はそんなに彼が良いとは思わないけどね。


っうか、皆が通る階段を占拠してるとか意味分かんないし。



だけど、私の小説に凄く役立ってくれてるので感謝してたりする。


これはかなり秘密だけど古沢君をモデルに小説を書いてたりする。


ヤンキーで女にだらしなくて、モテ男。

その上喧嘩が強くて、皆の憧れの的。

モデルにしない手はない。


現在進行中の小説の主人公は彼だ。



ま、バレちゃ大変なのでかなりの極秘事項だ。



「急ぐから帰ろ」

眞由美と可奈に声をかける。

駅前の喫茶店へ行かなきゃなんないんだよね。



「そうね、帰ろ。ほら、可奈」

私の言葉に頷いた眞由美は、未だに古沢君に見とれてる可奈の腕を引っ張った。


「えぇ~もうちょっとぉ」

ただをこねる可奈は眞由美にズルズルと引きずられる事になるんだ。



フッ...可奈ってば相変わらずね。

口角が自然と上がった。



しかし、本当迷惑。

この階段を下りないと昇降口には向かえないんだよね。

改めてたむろしてる古沢君達に視線を向ける。

もちろん、目立たないように、視線を合わせないように。


彼らと反対側の手すりの辺りを通り抜けるしかないか。

古沢君達に意見するなんて馬鹿げた事もしたくないし。

そんなことして目を付けられるなんてバカらしいもんね。



たむろしてる古沢君達とは反対側を然り気無く通る。


眞由美達も私の後に続いてくる。


この階段を降りれば、昇降口はすぐそこだ。


そしたら、この嫌な緊張ともおさらば出来る。


鞄を持つ手にグイッと力を込めて階段を降りる。




「きゃハハハ、琉希也ってばおかしい」

甘えた声を出す女子。


「んなことねぇし」

低くてハスキーな声がした。


イケメンは声もイケてるらしい。


しかし、こいつら本当に邪魔だ。


そんな事を思いながら階段を降りていた私を襲った突然の衝撃。



ドンッと音がして、グラリと体が揺れた。


はぁ?何?



「キャー嵐」

眞由美の叫び声が聞こえる。


後数段で踊り場に着くはずだった私の体は衝撃によりふわりと浮いた。


目の前に迫る階段。


ああ、落ちたのか...と自棄に頭は冷静だった。