現実は小説よりきなり






チンと鳴った機械音。


観音開きしたエレベーターのドアをホッとした。


それはきっと美樹も同じだと思う。



無言のまま私の部屋のドアの前まで向かう。



「ここ」

部屋の前で立ち止まってポケットから取り出したカード。


「あ、うん」

美樹は頷いた。



鍵穴にカードを通すとピピピと音がしてロックが解除される。


私はドアを引き開けた。


「寄っていく?」

普段ならきっとそんな事言わなかったと思う。


だけど、美樹の顔が悲しそうで言わずには居られなかった。


「い、良いの?」

あ、美樹の顔が嬉しそうに綻んだ。



「ん。お茶ぐらいだすよ」

通学時間が迫ってるから、そんなにのんびりしてらんないけどね。



「じゃ、少しだけ」

遠慮がちに微笑んで、私の開けたドアから部屋の中へと入っていく美樹。


私もその後ろに続くと背後でドアが閉まってロックされる。



「そのドアがリビングだから」

背後から美樹に声をかける。


「あ、うん。うわぁ~広いね」

私の言葉にドアを開けて、リビングに足を踏み入れた美樹は驚きの声を上げた。


「あ、うん。リビングは広いかも」

20畳ぐらいあるからね。


「へぇ、特別室って凄いね。部屋って何室あるの?」

キョロキョロと周囲を見回しながら、美樹は興味津々にうろちょろする。


「あ、この他には寝室だけよ」

私はそう言って寝室のドアを指差す。


「えっ?そうなの。特別室って言うからにはもっと部屋数あるのかと思った」

驚いた様に振り返った美樹は私を見る。


「うん。この階でこの部屋が一番狭いらしいんだ。ま、これでも十分住みやすいけど」

他の部屋は2LDKだって言う話だし。


「確かに全然良いよね。私の住んでる二人部屋なんてこのリビングを二人で住居に使ってる感じだし」

美樹は二人部屋なんだね。


「あ、二人部屋は行ったとこあるよ」

眞由美と可奈の部屋にお邪魔したことあるし。


「そっか。嵐ちゃんの友達は二人部屋なのね」

「うん。三階に住んでる。適当に座ってて」

美樹にそう言ってキッチンへと向かう。



「...うん。分かった」

まだ色々と見たそうにしながらも、窓際のソファーへと座る美樹。