「嵐ちゃんて話してみると凄く良い子だよね?こんなことなら、もっと早くに話しかけたら良かったぁ」
隣に並ぶ美樹が屈託なく微笑む。
そんな顔向けないで...胸が痛くなるから。
だって、私は美樹達が声をかけてくれる事を疎ましく思ってたんだから。
「そんなことないよ。私なんて普通だし」
中学のクラスメイトにシカトされて一人になった時から、ずっと普通を心掛けてきた。
目立てば打たれるなら、目立たなきゃ良い。
かと言って地味子ちゃんになってしまってもダメ。
普通に...平凡に過ごせば大丈夫。
「ううん。嵐ちゃんて話しやすいし良い子。ほら、私ってこんな見た目だから敬遠されがちなんだけど。普通に話してくれたし」
ね?っとウインクする美樹。
いやいや、それは、貴女達がグイグイ来るからで。
「...確かに見た目怖いもんね」
なんて冗談ぽく言ったら、
「ひどぉ~い」
と頬を膨らませた。
クリクリした目が可愛いのに、目の回りのアイシャドウがきつすぎて勿体無いなぁ。
「嘘です。でも、化粧の仕方を変えたらきっと可愛くなると思う」
余計な事だと思ったけど、思わず口から出てしまった。
「あ...そっか..うん」
一瞬、複雑そうに顔を歪ませた美樹だけど、直ぐに笑顔に変わった。
彼女もたま内に何かを抱えてるのかも知れないと思った。
もちろん、私とはモノだろうけど、仮面を被らなきゃ自分を保てないのは同じな気がした。
「...ごめん。余計な事を言ったかも」
踏み込まれたくない領域だよね?
私も同じだから。
「あ、ううん、違うの」
そんな深刻なモノじゃないの、と慌てて顔の前で手を振る美樹。
だけど、心とは裏腹に表情は固いよ?
「.....」
微妙な空気が流れた。
さてさて、どうするべきか?
美樹の表情は、聞いてほしいと言ってる様に思えるけど。
私には踏み込む勇気は無いんだよ。
だって、私は普通で居たいから。



