現実は小説よりきなり









「今日やった実験の化学式と定義は、試験に出るから良く覚えておくように」

そう言って化学の先生は教室から出ていった。


黒板に書いてる化学式と定義をノートに写し間違いしてないかを確認してノートを閉じた。

筆記用具を片付けてると声を掛けられた。


「嵐、帰ろ」

眞由美だ。


「ん、帰ろ」

勉強道具を持って立ち上がる。



「帰りは私が持ってったげるね」

そう言って私の手から勉強道具取ってくれたのは可奈。


「ありがと、助かる」

ニコッと微笑んで頷いた。


至れり尽くせり...ありがとう。





実験室からの帰りは彼らに会わずに済んだ。

もちろん、ホッとしたのは言うまでもない。


今日はこのまま会いませんように!

この祈りは聞き届けられた。






「しかし、ビックリだよね?色々と」

眞由美の言うように、色々とビックリだ。


「確かにね。嵐がまさか彼らと急接近するなんてね」

うんうんと首を縦に振る可奈。


寮までの道のりを歩く私達三人。


もちろん、他の生徒も沢山歩いてる。



「接近なんてしたくないわよ」

不服さ全開にそう言えば、


「んもう!嵐は贅沢なんだから」

と可奈に突っ込まれた。


いやいや、何が贅沢か分かりません。


「って言うか、明日も声かけられたりしてね?」

眞由美、不吉なこと言わないでよ。


「有り得るぅ」

キャハハと笑う可奈に、


「冗談じゃないわ」

と吐き捨てた。


今日だけでも、無駄に目立ったのにこれ以上は困る。


苛立った気持ちをぶつけるように道に落ちてた石ころを蹴飛ばした。


勢いよく飛んだそれは、運悪く電柱にぶつかって跳ね返ってきた。


「うわぉ」

慌てて避ければ、石は私の後方へと消えていった。

本当、踏んだり蹴ったりだ。


「大丈夫?嵐」

心配そうに私を見る眞由美。


「あんまり大丈夫じゃないかも」

ガクンと肩を落として大きな息をついた。


「今のって、ある意味ミラクルだったよ」

大丈夫よ、となぜか励まされた。

いやいや、可奈さんよ、どういう意味分かんないから。


項垂れた私のテンションは寮の自室に返っても上がる事は無かった。