現実は小説よりきなり








やっとの思いで辿り着いた実験室。


色んな意味で疲れた。


興味本意で向けられる視線も、ヒソヒソ話す声もうぜぇ。


美樹と古沢君のせいだぁ。


あんなに人が多い中で声なんてかけないでよね。




「嵐、あんた、色々苦労するね」

労いの声とは正反対にニヤついてるのは、なぜかな?眞由美。


「嵐、良いなぁ。古沢君に声かけてもらってぇ」

良くねぇわ、可奈のバカ!


同じ実験台の周りに座る二人を憎らしげに睨む。


人の苦労も知らないで呑気なんだから。




「可奈、変わってあげるいくらでも」

変われるものならね。


「どうして、そんなに嫌がるのよ」

訳が分からないとばかりに首を傾げる可奈。


「目立ちたくないから、彼らとは関わりたくないの」

眉が寄るのは仕方ないよね。

無茶苦茶嫌なんだもん。



「まぁまぁ、そんなプンプン丸にならない」

諌める眞由美に、はぁと溜め息をつく。


プンプンもしたくなるし。




「.....」

無言のまま頬杖をついて黒板に視線を向けた。


もう、やだよ。

なにかが狂い始めてる年か思えない。

モヤモヤする感情に押し潰されそうになる。

どうして、私になんて構うのよ。


怪我の原因になった美樹は100歩譲ってもさ。

古沢君が私に絡んでくる意味が分かんない。





先生が到着して始まった授業。


実験中も頭の中のモヤモヤは消えてくれなくて。


危うくアルコールランプで手を火傷しそうになった。


ほんと、踏んだり蹴ったりだ。