出る杭は打たれる。
だったら、出なきゃ良いだけ。
これが中学三年間で私が学んだ事。
普通で平均。
それが一番良い。
ま、だからと言って、何から何まで人と同じに合わせてるつもりもない。
自分の個性を保ちつつ、空気を読む技を身に付けた。
これが中々上手くいって、高校生活一年目は平和に終えることが出来たし。
そして、二年のこの年も今の所順調に進んでる。
現在一学期中盤。
季節は梅雨に入っていた。
授業もなんなく終わり、放課後がやって来た。
今日は編集者さんとの打ち合わせがあるので、大急ぎで待ち合わせの喫茶店へ向かわなきゃいけない。
HRを終えてざわめく教室の中でいそいそと学生鞄に荷物を詰める。
「ねぇねぇ、嵐も遊ぼぉ~」
「嵐、今日はカラオケ行こうよぉ」
駆け寄ってきた二人に顔を上げる。
肩までの茶髪をお姫様カールしてる可愛い系で大きなくりっとした瞳の柊眞由美(ヒイラギマユミ)と、お洒落なアッシュオレンジのベリーショートで狐目の美人系の毛利可奈(モウリカナ)が、鞄片手にやって来た。
「あ~ごめん。今日は用事で行かなきゃなんない所があるの」
笑顔の二人に眉を下げて申し訳なさそうに答える。
「そっかぁ、なら仕方ないね」
と眞由美。
「だね。残念だけど」
と頷いた可奈。
「ごめんね?二人とも。また誘って」
残念そうにする二人に申し訳ない気持ちになる。
「良いよ。用事あるなら仕方ないじゃん。また誘うし」
微笑んでくれる眞由美にホッとする。
「そうそう、また行こう」
可奈も微笑んでくれた。
この二人が一年からの友達。
他の子とも話したり遊んだりするけど、この二人は別格。
互いに心を許せてるからだと思う。
「校門まで一緒に行こうよ」
眞由美の申し出に、
「ん。行こう」
と鞄を手に立ち上がった。
帰り支度でざわめく教室を三人で歩き出す。



