現実は小説よりきなり









「立ち話してる場合じゃないけど?」

と声がしてそちらを見れ場、ニヤリと笑う眞由美の姿。


「「えっ?」」

あらら、ハモった。


「呑気な二人ね。次は移動教室だけど?」

ほら、と手に持った教科書を振ってみせる眞由美。


その手には科学の教科書。


「あっ...」

次の時間、実験室だ。


「嵐は分かったみたいね」

フフフと私に笑って眞由美は可奈にジト目を向けた。


「へっ?」

未だ飲み込めてない可奈は間抜け面のままだ。


取り合えず可奈は眞由美に任せて、私は移動の準備しよう。


自分の机へと向かう。


どうしてもテーピングした方の足を庇ってしまうから歩きにくい。

引きずってる足の痛みがマシなのが救いだ。


利き脚を怪我するなんてついてない。


クラスメイトは準備の出来た人から、実験室に向かうために教室を出ていく。

賑やかな教室は次第に静かになっていく。



机に戻って手早く用意を済ませる。

教科書、ノート、筆記用具を小脇に抱えた。


移動用の手提げ鞄欲しいかも。



眞由美達の元へと戻ろうと体を反転させる。

視界に写ったのは、大急ぎで科学の教科書準備してる可奈の姿。


フフフ、可奈も気付いたのね。


教室のドア付近にいる眞由美の元へと歩み寄る。


「お待たせ」

「良いよ。それより足大丈夫?それ私が持つわ」

そう言うと眞由美は私の小脇に抱えてた物を手に取った。


「ありがと。怪我するのもたまには良いね」

と悪戯な笑みを浮かべたら、


「バカじゃない。痛い思いしてるくせに」

と綺麗に伸びた爪先で額を突かれた。


「...いったぁい」

涙目で額を押さえて眞由美を睨んだ。


「フフフ...そのぐらいなんてないでしょ」

意地悪く口角を上げた眞由美。



「二人ともお待たせ」

駆け寄ってきた可奈。


「さ、行こう。本当に遅刻する」

眞由美の声に可奈と二人で頷いて歩き出す。


教室の中には既にクラスメイトは居なかった。



少しだけ急いで別棟へと向かって進む。


休み時間中の廊下は、生徒達が溢れてて歩きにくい。