HRが終わるチャイムが鳴る。


「よ~し、ホームルームはこれで終わる。今日も一日勉学に励めよ」

そう言って、出席簿を教壇にトントンとすると担任は教室のドアへと向かっていった。


あ...簡単に帰られちゃ困るから。


ガヤガヤと賑やかになる教室。



鞄の中から診断書の入った封筒を取り出すと、担任を追い掛けた。


もちろん、足首が痛いので競歩で。



「先生...待ってください」


ドアを開けて出ていこうとする担任の背中に声をかけた。



「ん?あ、おお、木下じゃないか。どうかしたのか?」

振り返った担任に、手に持ってた封筒を差し出した。


「昨日、学校の階段を踏み外して足を捻挫したんです。それで、体育は暫く止めておくように先生に言われました」

ぶつかったことは秘密で良い。

ややこしくなるのは困るから。


「そうか。大丈夫か?学校内の怪我なら、医療費は保険から出るから。帰りにでも申告の書類を取りに来るように」

「はい、テーピングしてるので痛みはマシです。帰りに書類貰いにいきます」

「おう、そうしろ。無理はすんなよ」

頭をポンポンと叩かれた。


「はい」

「体育の先生には俺が話を通しておくからな」

頷いた私に満足したのか、担任は背を向けて職員室に帰っていった。




「嵐、先生に診断書渡したの?」

可奈が後ろから声をかけてきた。


「ん。職員室まで行くのしんどいしね」

ヘラっと笑ったら、

「確かに、別館まで行くのは遠いよねぇ」

と笑う可奈。



「帰りに保険の書類を貰いに行かなきゃいけないけどね」

と肩を竦める。


「あ、それ私が貰ってきてあげるよ。職員室の近くの備品室に用事あるから」

「本当?助かる」

「任せてよ。足を痛めてる時ぐらい頼って良いからね」

「ありがとう、可奈」

本当に良い友達を持ったと思うよ。


私の返事を聞いて満足そうに胸を張る可奈は頼もしい。