「出身が羽谷中小学校ってことは言った?」
「うん」
「今、俺はばあちゃんとじいちゃんと暮らしてる」
「ん」
横田翔平は遠くを見ながらさらに続ける。
「小学校低学年ぐらいまでは、普通に優しい母親と頼もしい父親だったんです。私立小学校に受かって、すごい褒めてもらって。テストで百点採ったご褒美に、高級レストランに連れてってもらったりとかして」
すごいこと言ってるけど、突っ込まず、頷く。
ビュオーっと大きな音をたてて風が吹いた。
「……けど、三、四年ぐらいかな。学力が伸び悩んで、五年になったら完全にストップ。六年になってからどんどん落ちていく。目指していた私立中学校も無理になって……そこからかな?親が俺に対して冷たくなったのは。それで、小学校を卒業して、家に帰ったら俺の部屋空っぽ。なんて、言われたと思います?」
のどが痛い。
声も出なくて、首を横に振る。
「『お前の面倒はもうみれん。荷物をまとめたから、出て行きなさい』って言われた。僕、何がなんだかよくわかんなくてさ、聞き返したら、『おばあちゃんに迎えにきてもらいなさい』って。本当、笑っちゃうよな」
力なさげに横田翔平は笑う。
笑ってるけど、泣いてる。
心では泣いてる。
親にそんなこと言われるなんて、私だったら……
「……そんなこと」
「信じられない話だよね?テストの点下がって、目標の中学校行けなくなっただけで、子供を棄てるなんて」
私だったら、生きていけない。
信じられない体験をした横田翔平になんて言葉を言ったらいいかわからない。
ただ、歯を食いしばり涙を堪えた。
泣きたいのは横田翔平の方だ。

