────ガラガラッ


ついにボスキャラが登場する、その時が来たように教室の扉がゆっくりと開いた。

資料を抱えた、嶋田がびっくりした顔で私を見る。

そんな緊張することじゃない。

わかってるけど、口が引き締まる。

テストの前みたいな感じだ。

落ち着け、私。

別に、悪いことをするわけじゃない。

むしろ、私にしては大いなる一歩。

大きな成長だ。

あの、嶋田の表情は嘘をついている顔じゃない、本気の顔だ。


「遅かったじゃん」


なんだか、つっけんどんな言い方になってしまった。

というか、元々約束していたような言い方。

私が勝手に待ってただけなのに。

しまった、失敗した。


「……あ、うん?どしたの?」


少し驚いたような顔をする。

何か、予想くらいついてるくせに。

あくまで、知らない振りをする。

ずるいよね、そういうところ。


「こないだの、返事。今でいい?」


「うん、いいよ」


嶋田の表情が硬くなっていくのがわかった。

表情筋が完全に固まっている。

有り得ないぐらい、緊張してるんだ。

嶋田も怖いんだ。

だって、その証拠に手が小刻みに震えている。

私と同じぐらい嶋田も……



私たち、同じなんだ。



窓の外を見て、視線を逸らす。

深呼吸を一つ。