・・・え?
暫く明るい場所を走っているのに、今走っているのは、道がない山道。
当たり前だけど街灯はない。
しかし和泉さんは慣れているのか、ガタガタ整備されていない道を車のライトだけで走って行く。
「す、凄い道ですね」
「逆に整備されていると、無関係な人が入ってきてバレちゃうかもしれないからね。
ジャングルみたいな道、入ろうと思う?」
「思いません」
「だからこんなにガタガタ道なんだ。
揺れるから、気を付けてね」
確かに、結構揺れる。
でも、こんなんでめげちゃ駄目。
チサは恭真が好きなんだから。
チサが恭真を好きになったのは、入学式の日。
一目惚れってやつ。
イケメンな王子様みたいな人。
チサの好きな見た目にドストライクだった。
チサは両親がいなく寂しい夜を送る中、ずっと絵本を読んでいた。
好きな絵本に共通するのは、王子様の出てくるハッピーエンド。
いつかチサも王子様みたいな人と結ばれたい。
そして、1人ぼっちのチサを救ってほしかったんだ。


