「最初にお会いした時は思いました。
でも、お兄ちゃんのことを話してくれる和泉さんを、怪しいとは思わなかったんです。
例え和泉さんが多くの人を殺したとしても、お兄ちゃんを和泉さんが信頼していたのはわかりましたから」

「陽詩・・・良い子だね。
佐藤さんは幸せだね」

「そうであってほしいと、あたしも思います」



澄み渡った青空を見ながら、陽詩は笑う。

その後、ハッとしたように僕を見た。



「そういえば和泉さん。
なんでお兄ちゃんのこと、さん付けなんですか?」

「いや・・・呼び捨てはどうかなって・・・」

「別に呼び捨てでも良いと思いますよ。
お兄ちゃんもそう願っているはずです。
さん付けなんて、他人行儀ですし。
お兄ちゃんにとって友達も、和泉さんだけでしょうし」



佐藤さん・・・いや、陽也の過去を聞く限り、そうだろう。



「じゃ、お言葉に甘えて、呼び捨てにするね。
陽詩も僕のこと、名前で呼んで良いよ。
僕だけ名前呼びも変だしね」

「良いんですか?
あたし和泉さんより年下ですよ?」

「陽詩いくつ?」

「あたし18です。
医者になるため勉強中の身です」

「良いよ呼び捨てでも。
・・・というか、医者?」

「はい。
お兄ちゃんが死んだことを聞かされて、理由も聞いて。
お兄ちゃんみたいな人を救える、医者になりたいと思うんです。
離婚していますから、お父さんの七光りだと思う人もいないでしょうし。
堂々と実力勝負できそうです」




陽也、聞いた?

陽也の妹は、誰よりも強くなっているよ。




きっとその太陽みたいな、陽也に似た笑顔で、

多くの人を癒してくれるはずだよ―――。