でも、紅羽の言う通り、1度だけ話すのも悪くはないと思う。
澪鵺に手伝ってもらっていた時と比べ、調べてほしいデータ量も多くはない。
徹夜しなくても、僕ぐらいの実力なら1日で調べられるほどだ。
1日ぐらい仕事をしなくたって、なんとかなる。
しかも、気になった。
僕と正反対の性格を持つ、不思議な彼女のことが。
彼女の育ってきた環境が。
・・・幸せとはどういうものか、知りたかった。
僕は愛された記憶がない。
唯一僕を大切に思ってくれた人は、もういないし。
だから、知りたかった。
本などで目にした、“家族”というものを。
「1度きりですよ、陽詩さん」
「はいっ!ありがとうございます!」
「場所はどこですか?」
「お兄ちゃんどこが良い?」
「僕はその辺はよくわかりませんので。
陽詩さん決めて良いですから」
「じゃ、遊園地行きません?」
「遊園地?」
「ええ。
この間お兄ちゃんに依頼した友達が、遊園地のチケットをくれたんです。
あたし親しい人とか少ないので、お兄ちゃんさえ良ければ、是非」
「良いですよ」
「やった!
そうと決まれば、メアドや番号、交換しませんか?」
「はい」
ということで。
僕は初めての“デート”に出掛けることになった。


