「あ、お兄ちゃん!」
「何ですか?」
「今度一緒に、デートでも行かない?
お兄ちゃんにお母さんとの思い出、沢山聞かせたいの」
「陽詩さん。
一応念押ししておきますが、僕は陽詩さんの兄だと決まったわけではありません」
「和泉って名字だけで、決まったようなものだよ!」
「たまたまかもしれませんよ。
特別変わった名字ではありませんし」
「そうだけどさ・・・」
「氷さん!」
人懐っこいため積極的な紅羽が、笑顔でカキ氷のグラスを持ちながら来た。
「折角妹さん来てくれたんですよ?
1回ぐらいデート行って来れば良いじゃないですか!」
「だよね!えっと・・・」
「あ、申し遅れました!
私は玉置紅羽といいます。
あっちにいるのは、彼氏の神崎澪鵺!!」
「そうなの?
良いわね恋人がいて。
あたし、和泉陽詩です」
「よろしくお願いしますね陽詩さん!」
陽詩さんは名前の通り、暖かい笑みを持っていて、突然話しかけてきた素性のわからない紅羽に怯えもせず、楽しそうに話している。
僕とは大違いだな。
僕、本当に陽詩さんの兄なのか?
確かに彼女の言うように、和泉という名字があるため、兄である可能性もある。
だが、僕と彼女じゃ、見た目も性格も全く正反対だ。
暖かい陽詩さんのお兄さんだ。
僕のように、暗くコオリの人間なわけないじゃないか。


