その日、僕は開店準備をしていた。

このバーは、ある人から譲り受けたもの。

その人が大事にしていたグラスなどを、今日もピカピカに磨き上げるのが、僕の楽しみ。



この間澪鵺が殺し屋を辞めることを申し出たため、僕は最近暇だった。

僕は殺し屋に仕事を提供する仲介人だけど、実を言うと紅羽と澪鵺以外殺し屋に知り合いはいないんだよねぇ。

僕はボスに呼ばれない限り、アジトには行かないから。



ちなみに僕が言う“ボス”とは、小松恭真ではなく、その父親。

恭真くんのこと、僕はぼっちゃまと言うからね。

ボスって言えば恭真くんなんだろうけど。

未成年だから、ボスなんて思えなくて。

本人も“ぼっちゃま”って言われるのに慣れているからね。




・・・あれ?

ワインが1本無い。



そうだ。

この間売り切れたんだ。



この店に来るのは、3パターンに別れる。



1つ目は、僕に調べてほしい情報がある人。

2つ目は、殺しを依頼したい人。

3つ目は、裏の世界の人がただ暇つぶしにお酒などを飲みに来る人。



あ、前言撤回。

たまにデートしに来るバカップル元殺し屋さんもいるわ。


誰のことだかは、わかるよね?