裕「え、ぃや、その…」
混乱しすぎてどうすればいいのか分からなくなった私を見て沖田は言った。
沖「話は後で聞きます。とりあえず屯所戻りましょう?」
優しい沖田の口調に私はコクリと頷いた。
沖田は私を降ろすと私の手を取り小走りで店を出、店の裏のほうへ行った。
私も耳を隠しながら転ばないようにそれに付いていく。
店の裏は月光しか灯がなく足場もしっかりしない場所だった。
沖田は私の手を握ったまま歩く。
その速度は普通の道を歩くのと同じくらい。
それに対し私は、さっきから体が怠くて寒気、頭痛もあるのでついて行くのがかなり大変だ。
すると、最初はやっとの思いでついていけるくらいの歩調だったのが、いつの間にか普通についていけるくらいになっていた。
沖田が私に合わせてくれたんだ。
なぜだかそれが無性に嬉しい。
なんでだろう、と理由を考えながら歩いていれば、あっという間に屯所の近くまで来た。
相変わらずの近さに苦笑しながら屯所の裏門と思われるところから入っていった。
恐らく沖田が私のことが他の人たちに知られないよう、人目のつかなさそうな裏門から入ったのだろう。
お陰で、私たちは誰にも見つからずに屯所に帰れた。

