20061205
 還暦。6年ぶりの旅だ。
阪急で三宮へむかう。出航は12時。十分間に合う。

と思っていたら、ポートターミナルには誰もいない。
道順にそって歩いているとガードマンが、
「上海行きですか?もう皆さん乗ってますよ」

えー?まだ1時間前なのに。走り走り窓口へ向かった。
「お店のほうにも電話しました10時に」
「ハア10時?」

2時間前じゃんと思いつつ時計を見ると11時30分。
出国審査、税関と駆け抜けて乗船口へと向かう。
「そんなに走らなくてもいいですよ」
「急いで急いで」
係員が勝手なことを言う。

やっと横付けされた船に着いた。まさかここを登るの?
はしごのような階段を1階から3階ぐらいまでよじ登る。

「ほんとに気をつけてくださいね」
片言の日本語。クルーの人だ。
「いつもこんなんですか?」
「今日は100人ほどの女学生さんが先に上がりました。
この時期はとても少ないです」

12時。船は静かに出帆した。
メロディーが流れる。それは『北の春』だった。
見送りもドラもテープも何もない、静かな旅のスタートだ。

夕食まで時間があるのでインスタントらーめんを自販機で買った。
湯を入れて食べようと思ったら、箸がないスプーンもない。

服務員を呼ぶと、隣のおじさんはお酒が出ないと叫んでいた。
中国的旅遊の始まりである。

上海に着いたらすぐに杭州から義烏へ高速バスだと思って
インフォメーションで聞いた。
「私は汽車で行くからバスの事は知らない」

片言の日本語。後は知らん振り。
『ここ案内所だろ?』
言おうとしたが諦めた。
『上海について聞けばいいのね、はいはい』

「そうそう」
彼は笑顔でそう答えた。
中国的旅遊は笑顔が全てだ。

やっと夕食になって400円のマーボー豆腐をたのんだ。
出てきたのは小さな皿に大きな金属のスプーン。
せめてレンゲならとは思ったが、全くの不釣合い。

しかしもうここは中国。『中国的旅遊は笑顔が全て』
好!好!好!