「お前、何か勘違いしてんだろ?」 「え?」 「オレ、彼女いないけど?」 「ええっ?」 思わず顔を上げて遼を見た。 だ、だって、あの日……。 忘れたくて薄れかかっている記憶を辿る。 「誰のことを言ってんのかしらねーけど……」 「……ミュージカル行った日、会ったじゃん」 わたしはそれで彼女がいるって知ったんだもん。 「ミュージカル……? ああ、あれは姉キだよ」 「はぁ?」 聞いてないんですけど? お姉さんがいるなんて一言も聞いてない。