「あの……これ」
わたしは握り締めていた茶色い紙袋を差し出した。
不思議そうな顔で遼が受け取って袋を覗き込む。
「さ、さつきみたいに上手くないけど……」
「え?」
「まずかったら捨ててくれていいからっ!」
そんな言葉しか出てこない自分に苛立ちながら唇をかみ締める。
初めて作ったクッキー。
お兄ちゃんやお母さんには不思議がられたけど、悪戦苦闘しながら何度も作ったんだ。
少しでもわたしの気持ちが遼に伝わってほしいと願いを込めて……。
なのに、こんな言葉しか出てこないなんて……。
本当、素直じゃない、わたし……。

