「悪い俺…ちょっと買い直して…。」
「え?」

 今更すぎることは痛いくらいわかっている。それでもこんなプレゼントを渡していいはずがない。

「ちょっ…待って。どうしたの?」

 服の裾を引かれる。突然のことに戸惑っている真鈴の声が後ろからする。それも当然の話だ。

「どう…したの…?」

 彼女の質問に答えないでいられたことなど、未だかつてない。

「…かぶってる。」
「え?」
「プレゼント、お前の本棚に…あった。」
「…なるほど。だから買い直す、なのね。」

 泰雅は頷いた。頷くことがかえって虚しい。

「見せてもらってもいい?」

 この上なく優しく響く真鈴の声には従わずにはいられない。泰雅はゆっくりと顔を上げ、そっと包みを渡した。

「クリスマスプレゼントね。ありがとう、泰雅くん。」

 泰雅のものと比べるとあまりにも小さなその手に収まるクリスマスらしい包みを、真鈴はそっと開けた。出てきたものは…―――一冊の本。

「これ…『アクアマリンの秘密』?」
「自分でちゃんと読んだ、なげぇ話って多分これが初めてで、…面白かったから…真鈴にもって。」
「…読んだのね。」
「長かったけど、…面白かった。」
「そっか。…良かった。それに、ありがとう。すごく嬉しい。」

 にっこりと優しい笑顔が泰雅に向けられる。それが気まずくて、また少し視線を下げた。

「…物、かぶってるって…思わなくて。」
「あ、また勘違いしてそう。」
「勘違い?」
「うん。私が嬉しいのは、物よりも泰雅くんが自分を思ってプレゼントを考えてくれたってこと。それと、苦手な読書を好きになろうとしてくれているってこと。物がかぶったなんて、全然問題ないわ。」

 泰雅の大きな手に、真鈴の小さな手が触れた。ゆっくりと真鈴の温みが泰雅の手にも伝わってくる。