「契約、違反…か。」





部屋の天井を見上げながら、自嘲の笑いを溢す。



電話したあの夜。


星がやけにきれいなあの夜。




櫻田花音の戸惑った声。




あんたとこれ以上関わるのは、難しい。


そう思って、自分から、線を引いた。





自分の中に、入らせ過ぎた。


あんたも、入り過ぎた。



好きだとか、好きじゃないとか、そんな感情は俺にはよくわからないけど。


今の自分が。


今までにない感情を、抱き始めていることに気付く。


ほんの、少しの時間で。


自分の仕掛けた嘘と罠で。


自分が、その罠にかかりかけている。




まだ鳴り止む気配のない、携帯の振動に若干の慣れを感じ始めながら。




「ざまぁねぇな」




自分自身に嘲りの言葉を浴びせる。




まだ、きたばっかりだけど。


やっぱり、ここは、俺の肌に合わないらしい。


アンタが死んだからって戻ってくるべきじゃなかったんだ。


古傷が、どうも疼くから。


だから、心が弱ったんだ。


阿呆鳥の癇癪になんか、付き合ってる暇はなかったんだよ。




なぁ。


やっぱり。





嘘は。




一人きりでつくもんだ。