「一哉(かずや)…」 背後から控えめに名前を呼ぶ、女の人の声がした。 なんか妙に色っぽい艶っぽい声だなぁ。 なんて思って、野次馬根性でメニューに隠れつつちらりと声の方へ目をやる。 ―え? 目を見開く。 私の、聞き間違いかな。 いやいや、おかしいな。 今確かに一哉って呼んだよね、この人。 でも。 だって。 栗色の長い髪を背中まで垂らしている美人な女性は― 恋焦がれていた人を見るような熱い視線で。 私の隣。 中堀さんのことを見つめていた。