少女の家から近い公園です。遊具は一切置いてありません。あるのは、十月サクラと古びたベンチがひとつだけーーそれでも少女はこの公園が好きです。



(だってここに来ればあの人に会えるもの)


サクラの舞い散る中ベンチに座る淡い月色の髪の青年ーー少女の瞳が、淡い月色でいっぱいになります。






今思えばーーこの時から少女にとって、青年は特別な存在だったのかもしれません。



(なんてきれいなひと。わたしの知るだれよりもきれいな……)



少女は思いました。



きっとこれは、十月サクラが導いてくれたのだと。