「専業主婦の愚痴なんてくだらないと思ってるんでしょ?…美加」

「えっ?」

確かに違う事を考えてはいた…

でも絵里の話しをくだらないなんてもちろん思ってなんかない。

「今日は美加のお祝いの席だよ…絵里の話しはまたちゃんと聞くから」

多英が宥めに掛かるけど、悪くなってしまった雰囲気は良くなる兆しが見えない。

気まずい空気が流れたところに私のスマホが着信を知らせる。

表示された名前を見て驚き、正面の彼女の顔を見ると小さく首を外に向けて合図を送ってくる。

「ごっごめん…会社から連絡入ったからちょっと外すね」と断りを入れて店の外へ出る。

それから千尋のスマホへ掛けると彼女が急いでやって来た。

「美加ごめんね…3人で集まる事、絵里にも一応報告のつもりで連絡したの…

まさか美加に絡むなんて思ってなくて気分悪くしたよね?

顔色も良くないけど無理して来たんじゃないの?

会社に呼び出された事にして今日はもう帰った方がいいよ

また改めてお祝いしよう、その時に話も聞くから…ちゃんと話しなさいよ!」

私に何かあると千尋にはバレたみたい。

「千尋…ありがとーやっぱり今日は帰るね」

絵里だって旦那の浮気疑惑さえなければ直ぐに「何かあった?」と気が付く優しい人だから余裕のない彼女も気になるけど、私も正直今は自分の事だけでいっぱい、いっぱいだから千尋の厚意に甘える事にした。

私が先に席に戻り二人に会社に呼び出されたと苦しい言い訳をして

「ごめんね…また今度ゆっくり会おうね」と詫びてから店を出た。