正面玄関ドアの鍵を開けて暗い院内に「どうぞー」と招き入れられる。

「はい、お邪魔します」と入って行くと消毒液の独特の匂いに何故が緊張してしまう。

「外から明かりが見えると人が入って来ちゃうから悪いけど診察室までは電気点けないから足元気を付けてね」そう言いながらも私の手を引いて診察室にずんずん進んで行く向井医師

診察室に入り漸く電気が点いて部屋が明るくなる。

「そこに座って」と言いながら白衣に袖を通す向井医師は思った以上に若くとても男前なお医者さんだった。

簡易氷嚢で冷やしていた左目を診てもらう。

「骨折はないね…目も充血はなし…明日には赤黒く変色してくるだろうけど一週間では腫れも引いて化粧で誤魔化せるかもね?顔の診察は終わり、他はどこが調子悪い?」

イケメン医師に診察とはいえ顔を触られじっくり見られるのは何とも居心地が悪く無駄にドキドキして心臓に悪い、そんな私に構う事無く向井医師は飄々と診察していく…

「そうですね…胃が痛いのと頭痛がします」

「胃はストレスで頭痛は寝不足?…BARで話し声が聞こえたから」気まずそうに呟いた後に「点滴しよう」と微笑んだ。

点滴なんてして貰ったら完全に日付が替わってしまう。

そこまでは迷惑は掛けられないと思っているのに…

「隣のベッドで俺も2時間位休むから気にしなくていい」そう言って点滴を打ってくれた。