「美加は今でも最高にいい女だよ…」憂いを帯びた表情でそんな事を言われたら思いを断ち切れなくなるじゃない。
「あははー亨…今そんな事言われても全然説得力ないから
最後に、ここは亨の驕り
会計したら先に出て、私はこのカクテルを飲んでから店を出るから
あっ!…この店は私に譲ってよ
亨は彼女と新しい店を探して…さよなら亨…」
まだ何か言いたそうな亨だったけれど
「ありがとう美加…さよなら…」そう告げて店を出て行った。
右頬に一滴…涙が流れたのを左手で拭う。
亨との別れを噛みしめながらも、どこか解放された気分になっていた。
温くなりかけたカクテルを飲みほし、マスターに
「ごちそうさま…お騒がせしてごめんなさい。私はこれからもお邪魔させて下さいね」と声を掛けたらマスターの方が辛そうな表情をしているのが可笑しかった。