「彩乃!先に理科室行ってるよ!」 次の授業は移動教室のため、あたしは理科の準備を急ぐ。 「やばっ。遅れる!」 ドサッ 廊下を急いで走るあたしは、思わず教科書を落としてしまった。 「はい」 男の子が私の教科書を持ち、目の前に立っていた。 拾ってくれたんだ…! 「ありがとう…!」 「どういたしまして」 笑顔で教科書を渡してくれた男の子は、そう言ってどこかへ行ってしまった。 「ほんとにありがとう…」 小さな声でお礼をもう一度言い、あたしは理科室へ向かった。