チャイムが鳴り、ホームルームを終えたクラスメイト達が一斉に席を立つ。

本日の授業は全て滞りなく終了。

…いや、まだあったか。

俺は隣の席に座るメグの方を見た。

「準備はいいかしら?」

メグは既に鞄片手に俺を待っていた。

「ちょっと遅くなるかもしれないけど構わないわよね?最悪夕食くらいはこっちでご馳走してあげるわ」

それはまたあの薬草定食を食わされるという事だろうか。

だとしたら早めに切り上げて帰りたいところだ。

食欲の秋だというのに、あの毒とも薬とも思える料理だけは喉を通りづらい。

そんな事を考えている俺の心中を読み取ったのか。

「ほら!早く帰りたいならテキパキする!」

メグは、ようやく鞄を手にした俺の袖口を掴んで引っ張った。






メグの家は、学校とは反対側の山の手にある。

閑静な住宅街、その頂上付近にある大きな古びた洋館。

ほんの二週間前は雑木林だった場所だ。

既にそこからしておかしい。

たった二週間で更地にして、これほど大きな洋館を建てたのだろうか。

しかも二週間しか経っていないのに『古びている』。

「ああ、建物自体は数十年ものだから。この地に引っ越した時に『転移』の魔術で建物ごとここに来たの」

メグが大した事ではないとばかりに言う。

しかもその事を近隣の住民に不可解だと思わせないように、意識操作の魔術とやらも施したらしい。

全く、非常識なのはどっちなんだか。