嘘…


「何で…」


信じられない。


急激に冷たくなっていく心と体。


彼の母親は3年前に他界、兄弟は男ばかりで姉、妹ということはありえない。


独身の彼が女の子を部屋に上げるということは特別な関係の女性としか思えない。


そういうこと、なの…?


「ひとみ、これには訳が…」


ぼやける視界に、弁解する彼の言葉なんて耳に入らない。


泣いちゃダメ!!!!


彼女のことを問い質したいのに、


今の私にはそんな勇気も度胸も持ち合わせていなかった。


彼に背を向け、逃げるようにエレベーターへと走った。


背後で「ひとみ!」と悟さんの声が聞こえたけれど追いかけては来なかった。


今悟さんは彼女に私のことをどう説明しているのだろう。


溢れる涙を拭う気力もないまま車に乗り込み、キーを差し込んだ。



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