慎吾は複雑な表情で私を見つめていた。


感心と驚きと戸惑い。


ふたりのことを自分以上に知っているのに、私が何故不機嫌なのか、慎吾はますますわからなくなってしまったよね?


こんな時、どうしたらいいのか自分でもよくわからない。


でも、大好きな慎吾を困らせていることは確かだ。


嫌だ!


嫌だ嫌だ!!


もうぐちゃぐちゃになってきた!!!!


「あぁぁぁぁ!!!やっぱり私って嫌な女だわ。ありさ先輩だってわかっているのに、慎吾に八つ当たりしてる」


心の叫びが口を吐いて出ると、頭を抱えてベランダに飛び出した。


外はいつの間にか春の雨が静かに降り始めていた。


慎吾に合わせる顔がない。


悲しいくらいに情けない。


「濡れるぞ。中に入れ、風邪ひくぞ!」


慎吾の声に、首を振って、


「頭冷やしたいから、いい」


自分でも情けないくらい小さな声で言うと、手すりを掴んで空を見上げた。


このまま雨と一緒に消えてしまいたい。


消えてしまえたら、どんなにいいか。



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