慎吾が緊張した面持ちで、


「あのさ、さっきのことなんだけど、あの人……「知ってる」


慎吾の言葉を遮って言った。


本当は知っていたんだ、彼女のこと。


「高山ありさ、27歳、元フィギュアスケートの女王。


現在は光南薬局勤務の管理栄養士で、この度係長に昇格。


20日付で本社に栄転、だよね?」


「知らなかった」と言わんばかりに驚く慎吾は、


「お前…そこまで知っていて、どうして?」


その表情がおかしくて笑ってしまった。


「だって、ありささんは中学、高校の先輩だし、さっき車で来た彼、フィギュアスケートで金メダルを獲った西田


和磨くんは高校の同級生。高2の時に渡米して、ハーバード大学に進学、今や大企業の会長」


ごめん、慎吾。


西田くんは試験でトップ争いをしていた間柄だったからお互いよく知っているのよ。


一度も彼の上には行けなかったけど……。



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