その魅惑的な言葉に、テンションが上がった。
「わぁーい!ケーキ、ケーキ♪」
はしゃぐ私に、
「あのな、子供じゃないんだから」
慎吾は呆れたように言うと、キーを差し込み、エンジンをかけた。
「お前みたいなのが医者なんて奇跡だよ」
と、ブツブツ言いながら車を発進させた。
「ねぇ、まだなの?」
小田原厚木道路を経て温泉旅館がひしめき合う箱根新道をひたすら走る。
「ちょっと待ってろ!もうすぐ着くから」
慎吾は慣れた道とあってそつなく運転をこなす。
しばらく走ると、芦ノ湖が見えてきた。
「あっ!富士山」
富士山も見えてきた。
湖上に浮かぶ海賊船が視界に入り、乗りたい衝動にかられるも、湖面を駆け抜けるモーターボートを目にした途端、こっちの方が面白いかも、なんて、ひとりで葛藤を繰り広げていた。
慎吾のことだ、乗りたいなんて言った日には、ツンドラ気候も真っ青な視線が突き刺さるのは必至。
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