あの日からの私達は、一夜を共にした気まずさもなく、お互い好きという言葉も出ず、付き合っているわけでもなく、もちろん、体の関係もない。


私が慎吾に付きまとっている感じだ。


慎吾もそれを迷惑とは思っていない、と勝手に解釈している。


何とも微妙な関係。


「慎吾、喉乾いた~!お茶しよ~!」


行きたかったカフェがオープンガーデンのギャラリーで混み合って入れなかったので、城山公園まで足を伸ばし、自販機で缶コーヒーを買った。


展望台まで上がり、ベンチに並んで座る。


「わぁ、富士山が綺麗!」


今日は天気がいいので富士山がよく見える。


「どうだ?NICUは?」


タブを開けて、慎吾は缶に口をつける。


「大変だけど、とってもやりがいがあるよ」


子供は未来の宝。


小さく生まれてきた子を元気にし、両親の元に返すことが私の仕事。


だけど、


「生まれたばかりなのに、お母さんと離ればなれじゃ可哀相だよね」


思わず涙が零れ落ちた。



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