「だったら、私のこと……放っておかないで」


ミネラルウォーターを口に含み、口移しで成瀬さんに飲ませた。


「おい!何するんだよ!!!」


驚いた彼は反射的に飛び起きると、ずるずると後ずさりをした。


後ずさる彼を壁際まで追い詰めると、


「私はお前じゃないわ、『ひとみ』よ」


彼の頬を両手でそっと包み込む。


そして、戸惑う彼の唇に自分のそれをそっと重ねた。


「成瀬さん」


彼の耳元でそっと囁いた瞬間、視界が反転した。


天井と私を見下ろす成瀬さんが見えた。


「……ッ!」


予想外の逆転劇に頭の中は真っ白。


熱を孕んだ彼の眼差しは私を捉えたまま、離そうとはしなかった。


「傷ついても知らねぇよ」


乱暴な言葉とは裏腹に、彼の手は壊れ物を扱うようにそっと私の頬に触れた。


その熱い指先は体の奥の甘い疼きを呼び覚ます。



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