成瀬さんは自分の肩に置かれた私の手を取り、両手で包み込むように握った。


その手の温かさに、涙腺が緩む。


「向井先生はもったいないことをしたな。こんなに優しいキミの手を離してしまうんだから」


彼の優しい言葉に涙腺が決壊。


「いつか必ず後悔…ッ!」


言い終わらないうちに彼の胸に飛び込んだ。


顔が見えなくても成瀬さんが狼狽えていることはわかっている。


硬直する体と、急激な心拍の上昇。


あぁ、こんな時でも私は医者なのね…。


女になりきれない自分が恨めしい。


「ごめんなさい…しばらく胸貸して」


彼の了承なんてまるでお構いなしに胸に顔を埋めて声を上げて泣いた。


初めこそは体を硬直させていた成瀬さんはそんな私を拒絶することなく、無言で私に胸を貸してくれた。


宥めるように背中を撫でる手が優しくて温かくて、心地いい。


成瀬さんの腕の中で


泣いて、


泣いて、


これでもかというくらい泣いた。



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