「わかるよ。向井先生が坂田教授の娘と結婚するからだろ?」
えっ…
予想外の言葉に、心臓が飛び出しそうだった。
上杉教授だけでなく、成瀬さんまで知っているなんて。
そう思ったら
「ククク……」
喉を鳴らすような笑い声が出ていた。
「なーんだ、知ってたんだ!」
わざと明るく言うと、天を仰いだ。
成瀬さんは淡々とした口調で言った。
「昼間、坂田教授の所に行く途中で、偶然キミと向井先生がもめているのを見た。その後、向井先生が坂田教授の所に来て教授から結婚の話を聞いた」
ということは、
「引っ叩いたところも?」
敢えて聞いてみる。
成瀬さんは大きく頷き、
「あぁ」
短く答えた。
「はぁーっ!」
カッコ悪…。
ため息しか出ない。
隠しようがないじゃない。
大きく呼吸をし、気持ちを落ち着かせ、成瀬さんを見た。
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